その日は、朝から従業員がざわついていた。
元々落ち着きの無いフィリピン人だが、いつも以上に落ち着きがなかった。
嫌な予感がしていた。
それは的中した。
「〇×△☆♂・・・」なにやら激しい口調の怒鳴声が聞こえた。
見ると、一人の男に数人が大きな声でなじっているようだ。
とうとう、数人が圧し掛かろうとしている。
工場内での暴力事件は止めさせなければ・・・
近寄ろうとしたその時、目の前でさらに恐ろしい光景が飛び込んできた。
「こいつは、何をしているんだ!」
横になり目を瞑った従業員の上で手を広げている。
従業員とは違う派手な服を着た男が手をかかげている従業員になにやら言っている。
従業員はそれを復唱しているようだが、何を言っているのか分からない。
まるで黒魔術か何かの呪術を、掛けようとしているのか?
駄目だ!
とても一人ではこの状況を治めることは出来ないと感じた私は、助けを呼ぶ為に近くにあるプロダクションのミーティングルームに向かった。ここには、MD、プランナー等物事の分別が分かる従業員がいるはずだ。
ドアを開けた瞬間、目を疑った。
何なんだ!
そこには、列を作り前の人の肩に手をのせた人々がいます。
この非常時に、こいつ等「坂本九」のヒット曲「レット キス」を踊っているのか?
もう私には、何をどうして良いか分からなくなりました。